比較的に若いウサギの腫瘍について    卵巣・子宮の腫瘍(癌)の手術

症例その1

症例その2
2才のメスで1匹(羽)飼い、食事はホームセンターで買ったハムスターやリスにも与えるミックスフード(麦・圧ぺんトウモロコシ・マイロ・ヒマワリ等が入っている)と食パンを与えていました。他には野菜も与えている。普通のラビットフードや牧草は与えていませんでした。トイレにはパインチップを固めた物を使っていました。本日より御尻から濃い出血が続いています。断続的に出ている様ですが、結構な出血量と思われます。今日は食欲が無い様です。  (連れていらした飼主様からの情報です。)
一般的なフェンスゲージで飼われて居ます。トイレコーナーの中にはパインチップを固めたペレット状の物が敷き詰められています。ウサギは可也のストレスを感じている様です。非常に不穏な表情です。パインチップは西洋松のオガクズです。針葉樹ですので天然の殺菌消毒成分を含んでいます。
トイレの拡大図です。1回分の出血量です。何となくウンチのサイズも正常より小さい様です。検査してみたら尿成分は含まれて居ませんでした。どうやら子宮や膣からの出血の様です。レントゲン検査の結果では卵巣の腫瘍と子宮の腫瘍が疑われます。出血を止める為に緊急手術が必要です。
既に5〜6回分出血が有りました。だんだん元気も無くなって来ました。危険な状態ですので、飼主様を説得して腫瘍の摘出手術で命を助ける事になりました。人間と違って簡単に輸血が出来ませんので、診断の間違いをしたり、手術の決断が遅くなると、取り返しが付かない危険な状態に陥ります。体力が弱い動物ですので、手術に臨んで最大限の配慮とアシストが必要です。
診断が正しかったです。やっぱり卵巣の腫瘍と子宮の腫瘍が見つかりました。膣部分には次の出血に向けて血液が貯まり始めています。当然手術は完全無出血手術で迅速に最低限のガス麻酔濃度で切り抜けなければ弱ったウサギへの負担が発生します。安全に行われた麻酔では動物に対するストレスは限りなく小さくする事が出来ます。
手術中の写真ですが頭部側から写しています。手術部位より画面上方の離れた場所に滅菌布が血で染まっていますが、陰部からの新たな出血が布に染み付いた物です。急いで手術を成功させないと体から大切な血液がドンドン無くなってしまいます。
体に優しい手術は、安全な麻酔と丁寧で的確な手術手際で進められます。既に腹壁も切開して腫瘍部分が引出されていますが、手術部位の出血の少なさに御注目下さい。ウサギよりも更に体力が弱い小型ハムスターなどでの大型腫瘍摘出手術などの難手術を日常的に行っていますので、安全技術(ノウハウ)の蓄積が有ります。
腫瘍が発生すると腫瘍の周囲には通常の何十倍も血管が発達して、腫瘍に栄養が集り始めます。体が小さい動物ほど腫瘍の発育は早く、ハムスターなどでは1週間で2〜3倍にサイズが拡大する場合が多いです。早期発見と早期治療が何よりも大切です。
特に子宮や卵巣の腫瘍の場合は元々の血管からの供給だけでは栄養が不足する場合は、直ぐ近くに有る消化管(腸)の血管を飲み込んで栄養を横取りしようとします。癒着が起こって腫瘍が腸に転移を始めます。  写真では左側の卵巣腫瘍の血管の処理が終わりました。
左右の卵巣腫瘍と子宮角の腫瘍と膣部の腫瘍が処理完了しました。無事出血が無い状態で手術が進行できました。後は切り離しを行います。結構ウサギの大きさの割には大きな腫瘍です。金属の器具が付いている辺りがお腹を開けた部分です。
手術は決して一人では行えません。オペレーター(術者)以外に経験豊かな麻酔医と熟練した看護士の助手サポートがチームとなって困難な手術でも安全に切り抜けられます。困難な状況の動物に十分配慮した万全の準備と対策が、追い詰められた動物達を死の淵から救い上げます。
今、腹壁を縫合しています。悪い臓器(腫瘍部分)が切り離された時点で、体の負担が減少したようです。急に腸や周りの組織への血行が良くなって来ました。どうやら手術は成功です。重度の貧血と大変な痛みを抱えていた筈ですから、手術の効果が現れて、これから元気が戻って来るでしょうか?
御蔭様で元気が直ぐ戻ってきました。手術後1時間半ですが、水も飲んで、早くも青梗菜を齧り始めました。耳の血色も手術前より可也良くなって来ました。苦痛が無くなった様です。命拾い出来て良かったです。まだまだ5〜6年は生きられます。今回の発癌と不適切な食事内容に関係がありそうです。これからは繊維質の豊富な食事でお腹の中に善玉菌を増やしましょう。
2才のメス避妊手術を希望されて預かったのですが、どうも様子がオカシイです。呼吸も荒いし、可也血色も悪く、耳など真っ白です。お腹も動いていません。未だ抜けていない冬毛が可也残っています。これでは避妊手術どころでは有りません。良く診察すると乳頭も張っています。どうやら卵巣や子宮の病気がありそうです。また、少し呼吸不全も有るようです。鼻がグツグツ言って苦しそうです。普段からペットシーツをゲージの底やトイレの底に敷いて使っていた様です。予想外にハイリスクの患者です。呼吸不全に配慮して安全に手術しなければなりません。      この症例はハッキリした症状が無く、飼主様は健康と思っていたウサギが、実は卵巣腫瘍と子宮蓄膿症を起こしていて腹膜炎に発展する寸前の所で、たまたま一念発起した不妊手術で病気が見つかった幸運な症例です。ウサギは他のペットと違って殆ど鳴かないので自分の苦しみや不調を飼主様に伝える事が苦手です。勿論、私たち専門の獣医師ならその変化は見逃しませんが、一般の方でもウサギの体調を見分けられるポイントを、ウサギを愛する全ての飼主様に御教えいたします。   詳しくは今後のホームページの更新を御期待下さい。
苦痛による自律神経の不調で血圧が低下しています。軽い脱水症状も有ります。ガス麻酔もハイリスク用の、より安全なシステムで行う事にしました。念のため術前の補液治療もして上げましょう。
リラックスさせる為の術前注射をして少し楽になったようです。麻酔時間を短くする為に目覚めている状態で毛刈りと洗浄・消毒を済ませました。全ての乳頭が赤く腫れています。またアチコチの皮膚が小さく内出血したように赤く変色して、皮膚表面もザラザラしています。
タオルは洗浄液を拭き取ったものです。赤い部分はマジックの色です。今ガス麻酔が効き始めました。心電図のための電極を装着しようとしています。手術中は心電図・呼吸・心音・血圧・酸素飽和度・麻酔濃度・体温・体の反射反応などが麻酔医とアシストの看護士によって絶えずモニターされます。体のほんの僅かな変化も見逃しません。
子宮の状態は可也太く腫れ上がっています。太さは指位です(正常の3倍位です)御覧の通り真っ赤です。所ドコロ内出血も起こっています。子宮の表面は正常では艶々ピカピカなのですが、このウサギではザラザラして、所ドコロ小さな噴火口が形成されていました。チョッとづつ中に貯まっていた血膿が漏れていたようです。
左右の子宮角が合わさった部分が非常に拡大しています。まるで膀胱の様な大きさです。内部に液体も貯留しています。時々子宮や膣部の腫瘍が膀胱や直腸や盲腸と癒着・癒合を起こして一身同体になって何時場合が有ります。その場合は安全に腫瘍を取り除く事が難しくなります。このウサギでは如何でしょうか?
安全に取り除けるか心配なので膀胱を捜していた所、切開部分より深い所に無事な膀胱が見つかりました。本当に良かったです。これで腫瘍部分だけを安全に取り除く事が出来そうです。この後無事に手術は終了しました。鼻が上手く通じない呼吸不全の症状が未だ残っていましたので、その治療をして、手術後は酸素テントに入れて呼吸が楽に出来るように配慮しました。
 2番目の症例ではハッキリした症状が無かった為にウサギの不調に気付か無かったのですが、運良く元々予定していた不妊手術によって、腫瘍病変を取り除く事が出来た誠に幸運なケースです。飼主様の御話では、少し前から鼻が鳴る音には気が付いていらしたそうです。腫瘍化(癌化)した子宮から漏れ出た毒素が体内にたまって中毒状態が生じていた様です。その為に体のアチコチが浮腫んだり腫れたりした事が、呼吸不全を起こしていました。一般的に腹腔内に発生した腫瘍(癌)は栄養を欲しがって血管が豊富な臓器に飛び火して行きます。体内で1番栄養が集る場所は肝臓です。よって、肝臓への腫瘍(癌)の転移は非常に多く見られます。               手術によって運良く腫瘍(癌)を切除してその発達・拡散を防止出来た場合も、手術後も確りと免疫力を高める治療や、元々の発癌体質を改善する治療を継続して、腫瘍(癌)の再発を抑えなければ為りません。  
人間の場合も含めて、癌の発生や成長を促進させる要因には色々考えられていますが、癌を発生しやすくなっている体の状態を此処では便宜的に癌体質と言う事にします。私達の体は健康な場合でも絶えず体中の細胞が入れ替わっています。通常は同じ遺伝子情報を共有した細胞で体は作られていますが、癌化した細胞ではこの遺伝子情報が異なっていると言われています。健康な体を守っている免疫担当の細胞と癌細胞は絶えず体の中で戦い続けていると言われます。雑草の芽を摘むように絶えず腫瘍の発生を防止しているようです。癌の発生や再発を抑え続けるためには、この抑止力を高いポテンシャルで維持し続ける事と、発癌を促す癌体質を改善して行く必要が有ります。 其処でABC動物病院からの御願いですが、草食動物の発癌に抗菌剤・消毒剤・消臭剤・殺菌剤・食品保存料・食品防腐剤・などが大きく影響していると考えられます。一般的なトイレ用品であるペットシート、トイレの砂、トイレのチップ、チップ状やペレット状のの床材、針葉樹のチップ、等には糞尿の腐敗臭を抑える目的でこれ等の薬剤や薬効成分が含まれます。これ等の加工は御掃除をする飼主様の手間を削減する効果は絶大ですが、ペット自体への生理的ストレスや精神的ストレスは計り知れません。体内に吸収されて毒素として働く危険が有ります。非常に便利で此れからも使用は止められないと仰る飼主様が多いと思いますが、草食動物の体の仕組みを根底から破壊する恐れが有りますので御理解下さい。できれば、もっと自然に近いものや微生物を抑圧しない成分の物に変更を御願い致します。牧草や紙類(新聞紙・ペーパータオル・テッシュ・コピー用紙・そのた印刷が少ない物・香料が含まれて居ない物)が安全です。
2症例とも割りと若いウサギで腫瘍性の病気が見られました。
ABC動物病院の健康・医療のページ

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